20年以上の実績を持つ美容外科専門医。丁寧で繊細な施術でお客様の望む実現を目指す。 「お客様のもつ本来の美しさを引き出す」ことをモットーに「もとび」美容外科クリニックを設立。
SNSで目にする、バッカルファット除去に対する否定的な意見について思うこと
作成日:2025.9.8
下膨れの方や、口横のボリュームを気にされている方にバッカルファット除去という手術がありますが、バッカルファット除去をやった方が良いのか悩まれている方はいらっしゃるかと思います。
そこでSNSなど見ると、バッカルファット除去はしちゃダメだと言う先生だったり、やっても効果は出ないと言っている先生もいれば、適応をきちんと見て行えば良い手術だという先生もいるため、分からなくなる方も多いかなと思います。
今回はそんなバッカルファットについて美容外科歴20年の私の意見をお話ししたいと思います。
目次
バッカルファットについて
バッカルファットとは
最初にバッカルファットについて解説させてもらいます。
大体知っていると思いますが、バッカルファットというのはホホ、特に口横付近中心に深い所にある脂肪の塊ですね。
イメージで言うと、こぶとり爺さん知ってますか?
少し太っている、こぶとりのお爺さんではなくて昔話のこぶとり爺さんのことです。
ホホにコブがあるおじいさんのことですが、今の若い人は知ってますかね。
ほっぺたにコブがあって鬼に採ってもらうんですが、あのこぶの部分のボリュームを出している脂肪がバッカルファットですね。
この画像の人で言うと赤い部分です。

バッカルファットは普通の皮下脂肪とは少し違います。
皮下脂肪は皮膚の下の浅い所に合って、皮膚に硬く結合しているので吸引管で削りながら吸引する必要がありますが、バッカルファットは口の中から小さな穴を開けてスルスルと引き出して除去することができます。
バッカルファットを除去すると、この画像の感じで、500円玉やゴルフボールくらいの大きさの結構大きな塊です。

このバッカルファットですが、主に口横のホホの部分のボリュームを出している脂肪になるんですが、バッカルファットが多いと下膨れ顔になります。

そしてバッカルファットが多い人は年齢と共にたるんで下がってきてブルドック顔になりやすくなってしまいます。
バッカルファットが多い下膨れの方がお顔をすっきりさせるためにおこなうのがバッカルファット除去という手術なんですね。
バッカルファット除去はこのイラストのように口の中に穴を開けてスルスルと除去していきます。

こめかみあたりから頬骨のでっぱている骨の下を通って口横のホホにかけて大きなスペースがあるのですが、バッカルファットはそこを満たしている脂肪になります。

なので、バッカルファットを除去すると頬骨の下部分(ホホのコケの部分)のボリュームも減り、コケて老けちゃうよとか言われたりするんですね。
このムンクの叫びみたいにですね。
バッカルファット除去術はバッカルファットが多い人が余分なボリュームを除去する手術です。
バッカルファットが少ない人や、普通の人がバッカルファット除去をするとコケるリスクがあります。
ただ、バッカルファットが多い人がボリュームを減らして普通に近づけるぶんには問題はありません。

バッカルファット除去手術
バッカルファット除去の手術についてお話しすると、 お口の中の粘膜を切開して穴を開けて、その下に頬筋というホホをふくらましたり凹ませたりするときに使う筋肉があるんですが、その筋肉に分け入って入るとその裏がバッカルファットのスペースにになります。
下の図を見ていただくと分かりやすいかと思います。
手術では、そのスペースに入ってバッカルファットを引き出して除去していきます。

バッカルファット除去手術での注意点
ここで注意点があります。
バッカルファットの近くには耳下腺管という唾液を分泌するための管とか、顔面神経頬枝などが走っていて傷つけないように解剖位置を把握して丁寧に手術を行う必要があります。
顔面神経はネットワークがあるので多少傷ついても回復していきますが、とくに耳下腺管は傷つけるとホホが腫れあがって回復まではかなり時間がかかりますので注意が必要です。
なので、きちんと耳下腺管の走行を3次元的に把握して手術する必要があり、やみくもな手術はリスクが伴います。
ちなみに、バッカルファット除去術は下膨れの方に良い手術と言いましたが、一概に言えるわけではありません。
下のイラストを見ていただくと下膨れの原因であるホホのボリュームは、バッカルファットだけではなくて、jowlfatと呼ばれている皮下脂肪の厚みも原因としてあります。

jowlfatはバッカルファットより少し下の方にあって、口横からフェイスラインのかけてある皮下脂肪の厚みのこともあります。
これもブルドックの原因となります。
このバッカルファットやjowlfatが組み合わさって下膨れとなっていまいます。
なので、バッカルファットが多いのか、jowlfat(皮下脂肪)が多いのか、それとも両方なのかきちんと判断して適切に治療する必要があります。
以上、多少脱線はしましたがバッカルファット除去の解説でした。
では、本題のバッカルファットに対する否定的な意見についてお話しをしますね。
まず、バッカルファット除去はやってはいけないと断言している先生がいますが、これは今までの解説を聞けばわかると思いますが違うと思います。
バッカルファットを除去して多くの方が満足しているのは間違いない事実です。
ただ、適応の判断を間違ってバッカルファットを除去したりして、ホホのコケが目立ってかえって老けてしまうという症例があったりするので、そういう一部の例を挙げてバッカルファット除去のすべてが「悪」だというような話になっているんだと思います。 そもそも、やってはいけないと言っている先生はあまりバッカルファット除去をやったことがない先生だと思います。 あとは、SNSでは極端な話をすると視聴率が上がるのであえて批判を覚悟して言っている部分があるかと思います。
ここで、バッカルファット除去の症例写真で効果を見ていただこうと思います。
症例写真
症例写真①
バッカルファット除去一人目の方です。
術前は口横のボリュームが多くふっくらしていますね。
バッカルファット除去がおすすめな典型的なタイプです。
術後を見ていただきますと、口横のボリュームが減って下膨れ感が改善したのが分かりますね。
お顔がスッキリしました。
斜めから見ると、口横のボリュームが減ってすっきりしたのがよくわかりますね。
手術前⇒1か月後




バッカルファットを除去したからと言ってホホのコケはほとんど変わらず悪化していません。
ひとまわりお顔がスッキリして効果が出たのが良くわかります。
バッカルファットを除去した後は脂肪は再生したりして増えることはありません。
長期的にこの口横の脂肪は落ちて、先ほど言ったいわゆるブルドック顔になってしまうのですが、口横のボリュームが減ったことで将来的にお顔が老けにくくなったかと思います。
症例写真②
次に二人目の方を見てもらいます。
術前は口横のホホの部分にボリュームがありました。
バッカルファットを除去すると、やや下膨れで四角かったお顔のフェイスラインがスッキリしたのが分かります。
斜めからの画像だと、口横のホホ部分のボリュームが減ってフェイスラインが軽くなった感じがしますね。
術後はホホのコケが悪化は見れないですし、フェイスラインがすっきりしたぶんバランス的には逆にふっくらしたように見えます。
処置前⇒3か月後


処置前⇒3か月後


症例写真③
それでは3人目の方です。
この方も術前は口横のホホ部分にボリュームがありましたのでバッカルファット除去をおこなっています。
術後を見ていただくとホホがスッキリしたのが分かりますね。
ブルドック感がなくなりました。
斜めから見てもjowl部分のボリュームが減ってすっきりしたのが分かります。
たるみがある年齢の方の場合、脂肪吸引するとjowl部分はデコボコするリスクがありますが、バッカルファット除去では凹凸のリスクもあまりなく、jowl部分をすっきりさせることができます。
手術前⇒3か月後


手術前⇒3か月後


症例写真③
あとは、バッカルファット除去は上から見ると変化が分かりやすいです。
口横のホホの部分、こぶとり爺さんのコブ部分のボリュームが減って、引き締まったように見えますね。
お顔がひとまわり小さくなったのが良くわかります。次に3D解析の画像を見てもらいます。
ホホの黄色の部分がボリュームが減った部分です。
バッカルファット除去は口横のホホ部分のボリュームが減ると言うのが分かってもらえるかと思います。
口を閉じて吸うとホホが凹みますよね。
ここまで凹まないですが、ちょうどそのあたりの部分がバッカルファットを除去すると減る部分になります。
3D解析するとどこが減るか分かりやすいですね。
手術前⇒3か月後




症例写真④
手術前⇒1年3か月後


手術前⇒1年3か月後


次に4人目の方です。
この方はバッカルファット部分のボリュームもそうですが、フェイスライン付近の皮下脂肪の厚みもあったので、バッカルファット除去とホホの脂肪吸引もおこなっています。
術後を見てください。
バッカルファットを除去して、脂肪吸引も組み合わせると、よりフェイスラインがスッキリしていますね。
正面から見るとフェイスラインがスッキリ細くなりました。
斜めから見てもホホがスッキリしたのがわかります。
Jowlfat部分はバッカルファットと皮下脂肪が重なる部分なので、両方厚い方は、組み合わせ手術をおこなうとかなり効果的です。
小顔効果がしっかり出てご満足いただけたのではないかと思います。
症例写真⑤
手術前⇒3か月後




最後の5人目の方です。
この方は、バッカルファット部分にボリュームもありましたし、フェイスラインの皮下脂肪に厚みもありました。
また、エラの筋肉に厚みもあったので小顔効果をしっかり出すためにバッカルファット除去・脂肪吸引・エラボトックスを3つを組み合わせておこないました。
3つの組み合わせ手術は効果がかなり高く、強力小顔3点セットとして当院では割引してメニュー化しています。
3点セットは、バッカルファット・皮下脂肪・エラの咬筋のそれぞれに厚みがある人が適応なので、できる人は限られていますが、かなり小顔効果を出すことができます。
今回の症例の方も正面から見ると術前は下膨れ気味でふっくら気味だったお顔がかなりすっきりして細くなりましたね。
斜めから見てもホホのボリュームがかなりすっきりしたのが分かります。
ボリュームの多いタイプの方では骨切りなどしなくてもここまで小顔にすることは可能です。
久しぶりに会った友達はびっくりするんじゃないんですかね。
エラボトックスをしていますので若干のホホがコケ感というかすっきりした感じはありますが、そんな老けた印象にはなっていません。
以上、バッカルファット除去の症例5症例を見ていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
ホホがすっきりしてきちんと効果が出ていますね。
バッカルファット除去は適応を選べばとても良い手術だと思います。
適応をしっかり見極めることが大前提なのですが、そもそも適応がある人はそれほど多くなくて、希望される方も半分くらいはお断りしたりしています。
口横のバッカルファット部分にボリュームが多くない方がバッカルファットをとると、ホホがコケるリスクがあるためです。
適応がある人だけしか手術はできませんのでそこはご理解いただければと思います。
症例写真を見ていただいて、バッカルファット除去効果はお分かりいただけたと思いますが、ホホのコケや老けが加速するけではないと言うのもわかっていただけたと思います。
前も言ったように、バッカルファットのあるスペースは側頭部から頬骨弓の下、口横にかけてまでありますが、全体にバッカルファットのボリュームが均一にあるわけではなく、つるつるした脂肪の塊なので、重力で落ちてきて口横付近が特にボリュームが多いです。
フェイスリフトをすると、バッカルファットが透けて見えたりしますが、口横にかけて浅い位置にあって特にポコっと膨らみが目立ちやすいやすいんですね。 先きほど症例写真で見ていただきましたが、バッカルファットを除去すると主にこの黄色い部分が減ります。

上部のホホコケの部分が強調されることはあまりありません。
なので、バッカルファットのボリュームが多い人に限定して手術をおこなえば、主に口横のボリュームだけが減り、ホホ上部のボリュームが減ってコケて老けるということはあまり起こらないです。
僕自身も沢山バッカルファット除去の症例をおこなってきましたが、ホホがコケたとクレームを言われたことはありません。
下顔面中心に側面のボリュームが減るので、お顔の幅が狭くなり、丸顔からやや面長の感じに変化するイメージはあります。
あと一つお話ししたいのは、バッカルファットのボリュームだけが老けたり下膨れを強調する要因ではないということがあります。
バッカルファット部分の下垂だけでなく、ホホのコケというのも多かれ少なかれ潜在的にあります。
ホホの下膨れが改善すると、ホホのコケは残るので今度はそちらが目立ったように感じてしまうこともあります。
ホホのコケが悪化したのではなく、下膨れが改善したことで、残っているホホの若干のコケが気になっているという状態です。
例えば、目の下のクマ取りで、脂肪だけ除去して凸だけ減らして、凹みが残ってイマイチになっているイメージですかね。
これはいつも見てもらっている図ですが、老化と共にボリュームが増す部分(画像の赤い部分)があって、そこは減らしてあげて、老化と共にボリュームが減る部分(画像の青い部分)についてはボリュームを増やしてあげると老化の逆のことをするになるので若々しくなります。


こんな感じで老化と共に増えるところ、減るところがありますので、バッカルファットだけ除去して年々増えるところだけ減らしても、フェイスライン全体が若々しくなるわけではないということですね。
バッカルファット除去と同時に、人によってはホホコケの部分は減ってきますので、ヒアルロン酸を注入したりしてボリュームを出してあげると、それこそ卵型の若々しいフェイスラインになります。
例えばホホのヒアルロン酸の症例をみてもらいますと、
処置前⇒1週間後




この症例の方のように、ホホがコケ気味の方は、ホホにヒアルロン酸などを注入してボリュームを出してあげると、卵型の若々しいフェイスラインになることができます。
くどくなりますが、このヒアルロン酸でボリュームを出している部分はバッカルファットで減る口横のホホ部分ではなく、さらに上部の頬骨弓という骨のでっぱりの下のコケ部分です。
この症例の方はホホの上部にボリュームが出たことで卵型のフェイスラインになって若々しくなりましたね。
こんな感じでフェイスラインを若々しく整えたい場合は、バッカルファット除去だけでなく、ホホにボリューム出すことを組み合わせることでより若々しくすることができます。
まとめ
以上長くなりましたが、バッカルファット除去は適応を選べば非常に良い手術というのが分かっていただけたかと思います。
SNSなどでは、自分の主観的な意見を自由に表現できるぶん、極端なことを言う先生がいますので注意していただくと良いと思います。
極端なことを言うとたくさんの方に視聴してもらえて認知されて、結果的にクリニックの来院数を増やすことができるんですね。
そういう類のクリニックでおこなった術後の修正困難な相談が最近増えてきている気がします。
SNSはいろんな意見や情報を簡単にアップできるのですが、偏った意見も発信でき、偏っているほど人に注目されやすいのでリスクがあります。
いろんな情報を見るのは大切だと思いますが、そういうリスクを含めて冷静に判断していく必要があるかと思います。
SNSで見ると、バッカルファットは手術してもあまり効果はないと言っている先生もいますが、今まで見てもらった通り、バッカルファットの手術をちゃんとやってもらえば良さが分かるのになと思います。
人によってバッカルファットをしっかり除去しても効果が見えにくい方というのはたまにいらっしゃいます。
これはどの手術でもそうかと思います。
ただ、普通は効果を実感していただける手術です。
バッカルファットは少しコツがいる手術で、しっかりバッカルファットの親玉の芯の部分のボリュームをとる必要がありますが、先生によっては闇雲にとって芯が取れずに、手前のモシャモシャした少量の脂肪だけしかとらない先生もいます。
そういうやり方だとあまり変化は出せません。
なので、先生選びも慎重におこなう必要があります。
少し前に話題になった悪徳と言われているクリニックなどでも頻繁にバッカルファット除去がおこなわれているようですし、もちろんきちんと適応を見極めておこなっている先生もいると思いますが、そういうクリニックでは適応があるないにかかわらず手術をルーチンですすめて売り上げを上げようとするので注意が必要です。
また、最近美容外科医が急増しており、経験の浅い先生も多くなっています。
そもそも適応がよく分かっていなかったり、症例を多くこなしたいと焦る中で適応ではない人に手術をおこなってしまうというのもあるかと思います。
先ほども言ったようにバッカルファット除去は耳下腺管や顔面神経損傷のリスクがあり、決してリスクが少ない手術ではありません。
また、しっかりとバッカルファットをとってもらえないこともあります。
なので、きちんと適応を見極めてもらってちゃんと手術をおこなってもらうようにドクター選びを慎重におこなう必要があります。
SNSでは否定的な意見も散見されますが、逆にそれがバッカルファットのリスクもご理解していただく機会にもつながるので賛否あるのは悪いことではないかと思います。
長々とお話ししましたが、今回お話しした内容がバッカルファットをお考えの方に少しでもお役に立てればうれしいです。
適応がある方は、きちんとバッカルファット除去の手術をおこなって満足していただいて、適応がない方は逆にやらない方がいいんだと認識していだけると嬉しいです。