20年以上の実績を持つ美容外科専門医。丁寧で繊細な施術でお客様の望む実現を目指す。 「お客様のもつ本来の美しさを引き出す」ことをモットーに「もとび」美容外科クリニックを設立。
ヒアルロン酸治療による失明リスクの真実を解説
作成日:2025.6.27
失明することがあるなんてとても怖いですね。
前のコラムではヒアルロン酸の血流障害について解説しましたが、血流障害が網膜に起こってしまうと失明してしまいます。
血流障害もまれなことですが失明となるともっとまれなリスクではあります。
ただ、これから説明するように実はどこの顔の注射でも起こりうることなんです。
今回は、ヒアルロン酸の失明についてなぜ失明してしまうのか、どういう症状が出たら気をつけたらよいかなど解説していこうと思います。
このコラムは、ヒアルロン酸の施術を受けるお客さんだけでなく、ドクターの方にも少し参考にしていただけると幸いです。
血流障害とは
血流障害はヒアルロン酸を顔に注射した際に、誤って動脈(場合によっては静脈)にヒアルロン酸が入り込んで血管を詰まらせてしまったり、血管に直接入らなくても血管が圧迫されて血流が届きにくくなって組織がダメージを受けてしまうことを言います。
そして、血流障害がおこると、組織に血液が届かなくなり、最悪のばあい組織が壊死してしまいます。
血流障害で壊死すると言いましたが、最も怖いのが網膜の壊死、つまり今回お話しする失明です。
顔の動脈は内頚動脈と言う脳や目に行く動脈とつながっています(図)
ヒアルロン酸が誤って動脈に入ってしまうと、動脈をニュルニュルと逆行していきます。
内頚動脈系の動脈まで逆行してしまうと、血流にのって目や脳に行く動脈に飛んで動脈を詰まらせてしまいます。
目に行く眼動脈が詰まると、網膜が虚血になって壊死してしまい失明してしまいます。
また、脳の方に行くと脳梗塞を起こします。 とても怖いですね。 ただ、失明は血流障害でもごくまれなことです。
稀と言ってもリスクはゼロではないので、注入する先生は、常に緊急の事態を想定して対応できるようにしておくことが大切です。
あとは当然、血流障害を起こしにくい注入方法も知っておく必要があります。
どこに注入すると危ない?
ちなみに失明がどの部分のヒアルロン酸注入でおこなったのかを見てもらいます。
下の図を見てください。この点の部分が今までに失明に至ったことのあるとされているヒアルロン酸の注射部位です。
失明するのは目に近い部分だけではないのがわかりますね。
失明が起きた注入の部位は眉間が一番多いですね。
目や脳に行く内頚動脈系の枝の滑車上動脈が走っている部分なので、目に飛びやすいんだと思います。
眉間はリスク部位なので当院ではあまり注入はお勧めしていません。 後は鼻も多いですね。
鼻のヒアルロン酸による失明は、日本でもよく報告されています。
失明例は鼻背のヒアルロン酸が多い気がしますが、鼻先も鼻柱基部でも 失明した例があります。
あとは、法令線も多いですね。
ほうれい線は前の動画でも話したように鼻の虚血につながりやすい部分ですが、眼角動脈から内頚動脈系の動脈に達して失明するリスクもあります。
あとは、額やこめかみ、目周り、唇、顎まで、顔中どこに ヒアルロン酸を注入したとしても失明が起こっているのが 怖いですね。
あごのヒアルロン酸で失明するなんて驚きです。
あごは注入の際はヒアルロン酸の量を多く注することが多いので長く逆行してしまうのかもしれません。
以前のコラムでは、顔のどの部分でヒアルロン酸を注射すると血流障害のリスクがあると話しましたが、同時に失明のリスクもあるということです。
なので、美容外科でヒアルロン酸を注射する際は、失明のリスクは非常に少ないですが起こりうることとして知っておく必要があります。
もし目の動脈が詰まったら?
次に眼動脈が塞栓した場合の症状についてお話しします。
眼動脈が詰まった場合、今までお話ししたように網膜の機能が低下して視野の欠損や失明がおこります。
あとは、目の痛み、頭痛、眼球運動障害、眼瞼下垂なの症状が出ることがあります。
これをそのまま放置すると失明に至る可能性があります。
眼動脈の塞栓は、90分以上経つと症状が不可逆的になってしまいます。
つまり、90分以内に治療しないと失明に至ってしまいます。
注入するドクターも常に眼動脈を疑わせる症状が出る可能性を想定しておく必要があります。
そして、もし視野の欠損や眼球運動障害などが出た場合、1秒でも早くヒアルロニダーゼを、球後注射と言って眼球の裏側に大量に注射して詰まったヒアルロン酸を溶かす必要があります。
お客さんも、ヒアルロン酸の後に目が痛くなったり、視野の一部が見えにくくなったり、物が二重に見えたり、目の開きが悪くなったりなどの目の症状が出たら失明するリスクがあるのですぐに言ってください。
外に出てしまっていたら、施術をしたクリニックに連絡して大至急戻ってください。
ヒアルロニダーゼで早急にヒアルロン酸を溶かしてもらう必要があります。
ちなみに以前のコラムでもお話しましたが、カニューレだからと言って血流障害を起こさないというわけではないので、改めて注意点として挙げさせてもらいます。
知っている失明の例では、鼻先からカニューレを入れて鼻根に向かってヒアルロン酸を注入したそうです。
血管に入りづらいとされている太いカニューレであっても、失明が報告されています。
鋭針よりはましという感じで思っていただいて、油断はしない方が良いでしょう。
注意点
あと、ヒアルロン酸の注意点としては、経験が多い先生はもちろんなのですが、見極めるのは難しいかもしれませんが、リスクの少ない注入方法をおこなって、何か起こったときすぐに対応できるように準備ができている先生が安心ということです。
経験が多くても、先ほど言いましたが今まで問題なかったから大丈夫と言って油断している先生も不安ですね。
たまたま運よく起こらなかったかもしれませんが、熟練している先生にも起こりえることはきちんと準備する必要があります。
症例数が多くなると必ず一定数のリスクは出てきます。
大手クリニックでは先生の入れ替わりが激しく、新人の先生も多く、いろんな先生もいます。
料金がお手頃なのも大事ですが、体のことなのできちんと安心できる先生に任せるのがおすすめです。
表に出てこないだけで、水面下でいろいろな血流障害の事故が起こっています。
お客様は不安になるかもしれませんが、今回のようなコラムを作って、何かあったらすぐに対応する必要があるということを知ってもらう必要があると思いました。
まとめ
以上がヒアルロン酸注入の最悪の合併症の失明についてのお話しでした。
眼動脈が詰まってしまうと早急に治療しないと回復しなくなってしまうので、失明のリスクというのを頭の隅においておいて、怪しい症状がでたらすぐに知らせるというのが重要になります。
失明に関しては通常の血流障害よりさらに素早い対応が必要になってきますので、きちんと危機管理をおこなっているドクターやクリニックを選ぶというのも重要かと思います。
怖い話をしましたが、失明は通常の血流障害のリスクよりさらにまれな合併症ではあります。
血流障害を起こしにくい注入方法で、もし起こったとしても素早い対応をおこなうことで不幸にも失明してしまう方がいなくなることを願っています。
何度もしつこく言いますが、血流障害の症状がもし出たらすぐにやったクリニックに連絡してヒアルロニダーゼで溶かしてもらってください。
少しでも不安なことがあればすぐに先生に診察してもらってください。
大丈夫かなと放置するのは危険です。
あとは、お客さんだけでなく、ヒアルロン酸を注入する先生にも、常に血流障害のリスク、失明のリスクを想定しながら施術をおこなってほしいと思っています。
このコラムを参考にしてもらって、今後、対処がまずくて血流障害の後遺症を残したり、最悪失明したりするような不幸な方が出ないことを願っています。